平成23年度 新潟工科大学卒業式・修了式 式辞


 本日ここに、御来賓ならびに保護者の方々の御臨席を賜り、平成二十三年度新潟工科大学卒業式を挙行することになりましたことは、誠に喜びに堪えません。
 本日、晴れて学位記を授与された諸君に、心よりお祝い申し上げます。また、この日を待ちわびておられた保護者の方々のお喜びも、いかばかりかとお察しし、心よりお祝い申し上げます。諸君の胸中は、卒業または修了の喜びと未来への期待感に満ちあふれていることと思いますが、本日、卒業式を迎えるにあたり、あらためて、これまで諸君を支えてこられた家族や友人たち、先輩たち、御世話になった地域の方々、御指導いただいた先生がたなど、学生時代に出会った多くの人々への感謝の気持ちを思い起こしてください。
 諸君が学んだ新潟工科大学は、建学の精神を「ものづくりの視点を重視した工学教育を通じて、未知の分野に果敢に挑戦する創造性豊かな人材を育成する」と定め、平成七年度の開学以来、実践的な学習を重視した工学教育及び産業界の発展に資する先端的研究を推進してきました。その成果に基づき、平成十一年度、より高度な研究教育を行う場として大学院工学研究科を設置し、その充実に努めてきました。本日、学位記を授与された諸君の進む道はそれぞれ異なるにせよ、本学で学んだ専門的な知識と技術、及び幅広い教養は、これからの人生の大きな支えとなるものと確信しております。建学の精神を忘れず、これまでに修得した知識と技術を存分に活かし、「ものづくり」のプロフェッショナルとして活躍していくことを心より期待しております。
 新潟工科大学は、「ものづくりこそ産業界発展の原点である」との新潟県産業界の信念と熱意が県内進出企業をも動かし、また新潟県や柏崎市をはじめとする多くの県内市町村、さらには県民各位の御支援のもと、産学協働を基本理念として創設された新潟県内初の工科系私立大学であります。本学設立の牽引役を果たされた設立期成同盟会は、産学交流会へと改組され、開学以来、インターンシップや共同研究、就職活動などに多大な御協力をいただいてきております。このような本学創設の経緯を自覚し、産業界から寄せられた期待にしっかりと応えてほしいと思います。
 現代の科学及び技術は日々進歩して止むことはありません。それ故、生涯にわたり常に学ぶ姿勢を保持していくことが大切であります。本学としても、社会人となる諸君を様々な面で支援していきたいと思います。
 将来、研究者として学術の発展に寄与すること、あるいは、さらに高度な専門的知識を修得することにより社会貢献を目指し、大学院に進学する諸君は、それぞれの目的の達成に向けて一層学業に励んでください。
 大学院博士前期課程及び博士後期課程を修了した諸君は、本学で修得した高度な専門力を活かし、新技術の研究開発に挑戦するとともに、プロジェクトをまとめ上げていくリーダーとしての活躍に期待しております。
 現代社会は、東日本大震災からの復旧・復興という重要な課題に加えて、環境問題やエネルギー確保の問題など、様々な課題に直面しております。これらの課題においては、技術や科学、産業や経済、個人の生活や社会の仕組みなどが複雑に関わり合っております。産業界においても、異なる分野が互いに深いかかわりをもつようになり、一つの製品を作り上げる上で、異なる業種間で協力し合う場合も少なくありません。従って、どのような分野に携わるにしても、他の様々な分野の知識や考え方が必要となります。社会に出てからも研鑽を怠らず、自らの専門分野のみならず、人文・社会、医学などを含む他分野にも広く目を向け、バランスのとれた知識を身につけ、社会の発展に寄与していくことが重要であります。
 さて、技術者の使命は、人類の幸福のために新しい技術を開発し、すぐれた製品を製造することにありますが、日々の生活を便利なものにするばかりでなく、心に豊かさを与える製品を目指すことも大切なことであります。昨年十月に死去した米国アップル社のスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者は生前、「高度な技術を誰でも使えるように」という信念のもと、新しい型のパソコンや、iPod(アイポッド)、iPhone(アイフォーン)などの携帯機器を次々と発表しましたが、それらの製品はいずれも、その直感的な操作性と美しいデザインにより、多くの人々に愛用されてきました。技術者の先見性と芸術家の感性を備えた人物として高く評価されたジョブズ氏を目標とし、若い世代の中から第二、第三のスティーブ・ジョブズが生まれることを期待しております。諸君も、本学で培った技術を存分に活かし、多くの人々から愛される製品を創り出す夢を持ち続けるよう願って止みません。

 これから迎える若葉の季節にふさわしく、本日、新たな希望にあふれた諸君を社会に送り出せることを、我々教職員一同、この上ない喜びとするところであります。在学中に出会った恩師や友人は計り知れない貴重な財産であり、これからの人生の心の糧となることと思います。卒業後も折にふれて母校を訪れ、母校の発展ぶりを見ていただき、後輩を励ましてください。

 最後に、このたび学位記を授与されたすべての諸君が、心身ともに健康で、自信と誇りをもって地域や日本、さらには世界の発展に貢献されますよう祈念し、ここに式辞といたします。

平成24年3月20日          
新潟工科大学長  長谷川 彰