平成24年度 新潟工科大学卒業式・修了式 式辞


 本日ここに、ご来賓ならびに保護者の方々のご臨席を賜り、平成24年度新潟工科大学卒業式を挙行する運びとなりましたことは、誠に喜びに堪えません。
 本日、晴れて学位記を授与された皆さんに、心よりお祝い申し上げます。また、この日を待ちわびておられた保護者の方々のお喜びも、いかばかりかとお察しし、心よりお祝い申し上げます。皆さんの胸中は、卒業または修了の喜びと未来への期待感に満ちあふれていることと思いますが、本日、卒業式を迎えるにあたり、あらためて、これまで皆さんを支えてこられた家族や友人たち、先輩たち、お世話になった地域の方々、ご指導いただいた先生がたなど、学生時代に出会った多くの人々への感謝の気持ちを思い起こしてください。
 皆さんが学んだ新潟工科大学の理念は「産学協同」であり、建学の精神は「ものづくりの視点を重視した工学教育に基づき、未知の分野に果敢に挑戦する創造性豊かな人材を育成する」であります。本日、学位記を授与された皆さんの進む道はそれぞれ異なるにせよ、本学の理念及び建学の精神を忘れず、これまでに修得した知識と技術を存分に活かし、「ものづくり」のプロフェッショナルとして活躍してください。本学で学んだ専門的な知識や技術、幅広い教養は、これからの人生の大きな支えとなるものと確信しています。
 現在の産業界が皆さんに期待していることは、ものづくりの知識や技術に加え、創造力や挑戦力、コミュニケーション力など、人間としての総合的な能力、すなわち人間力であります。本学では、従来から、多くの企業の協力のもと、企業実習などの機会を提供してきましたが、本年度新たに、産業界との協働による課題探求型の授業「工学プロジェクト(学内企業実習)」を導入し、本格的な取組を開始いたしました。皆さんには、本学で培った人間力を存分に発揮し、現代社会をたくましく生き抜いてほしい。また、社会に出てからも、多くの人々と出会い、様々な現場に触れることで大きく飛躍していただきたいと思います。
 現代の科学及び技術は日々進歩して止むことはありません。それ故、生涯にわたり常に学ぶ姿勢を保持していくことが大切です。本学としても、社会人となる皆さんを、これからも様々な面で支えていきたいと思います。
 将来、研究者として学術の発展に寄与すること、あるいは、さらに高度な専門的知識を修得した上で社会に貢献することを目指し、大学院に進学する皆さんは、それぞれの目的の達成に向けて一層学業に励んでください。
 大学院博士前期課程及び博士後期課程を修了した皆さんは、本学で修得した高度な専門力を活かし、新技術の研究開発に挑戦するとともに、プロジェクトをまとめ上げていくリーダーとしての活躍に期待しております。
 現在、わが国は、東日本大震災からの復興をはじめとする様々な課題に直面していますが、これらの課題においては、科学や技術、産業や経済、個人の生活や社会の仕組みが複雑に関わり合っています。産業界においても、異なる分野が互いに深いかかわりを持ち、一つの製品を作り上げる上で、異なる業種間で協力し合う場合も少なくありません。従って、どのような分野に携わるにしても、他の様々な分野の知識や考え方が必要となります。社会に出てからも、自分の専門分野のみならず、人文・社会、医学など、他分野にも視野を広げ、バランスのとれた知識を身につけ、社会の発展に貢献してください。
 明るいニュースの少ない昨今、京都大学の山中伸弥教授が2012年ノーベル医学生理学賞を受賞したことは、我々に希望を与えてくれました。それと同時に、この快挙は、日本の科学技術の水準の高さを世界に示しました。山中教授の人工多能性幹細胞、いわゆるiPS細胞に関する業績は、生物学上の画期的な発見という学問的価値に加え、再生医療や創薬への応用に新たな道を開いたことで高く評価されています。この業績には、若い研究者たちの働きが大きな役割を果たしています。通常、研究活動では、他の研究者の論文や成果を目の当たりにし、とかく先入観をもつようになりがちですが、彼らは、先入観や常識にとらわれず、医学の研究に工学的手法を導入し、iPS細胞の発見に寄与しています。また、「多くの人々を救うことができるという夢」を持ち、「決してあきらめない姿勢」を貫いたことも、このたびの成果に結びついています。皆さんも、将来に夢を抱き、その実現に向けて、異なる分野との協働にも積極的に取り組み、たゆむことなく努力してほしいと願ってやみません。

 これから迎える若葉の季節にふさわしく、本日、新たな希望にあふれた皆さんを社会に送り出せることを、この上ない喜びとするところであります。卒業後も折にふれて母校を訪れ、後輩を励ましてください。
 最後に、このたび学位記を授与されたすべての皆さんが、心身ともに健康で、自信と誇りをもって地域や日本、さらには世界の発展に貢献されますよう祈念し、ここに式辞といたします。

平成25年3月20日          
新潟工科大学長  長谷川 彰