平成25年度 新潟工科大学卒業式・修了式 式辞


 本日ここに、ご来賓ならびに保護者の方々のご臨席を賜り、平成25年度新潟工科大学卒業式を挙行することになりましたことは誠に喜びに耐えません。
 本日、晴れて学位記を授与された皆さんに、心よりお祝い申し上げます。また、この日を待ちわびておられた保護者の方々のお喜びも、いかばかりかとお察しし、心よりお祝い申し上げます。皆さんの胸中は、卒業または修了の喜びと未来への期待感に、満ちあふれていることと思いますが、あらためて、これまで、皆さんを支えてこられた家族や友人たち、先輩たち、お世話になった地域の方々、ご指導いただいた先生がたなど、学生時代に出会った多くの人々への感謝の気持ちを思い起こしてください。
 皆さんが学んだ新潟工科大学は、新潟県産業界が「自らの手で地域の発展を担う技術者を育成したい」という高い志のもとで設立した県内初の工科系私立大学であります。大学の理念を「産学協同」とし、建学の精神を「ものづくりを重視した工学教育を通じ、未知の分野へ果敢に挑戦する創造性豊かな技術者を育成する」と定めております。平成7年4月の開学以来、社会に送り出した卒業生の総数は3700名を超え、その8割は新潟県内で活躍しており、地域の発展に貢献しております。皆さんも、進む道はそれぞれ異なるにせよ、本学の理念及び建学の精神を銘記し、「ものづくり」のプロフェッショナルとしての道を歩まれますよう期待しております。
 さらに高度な専門的知識及び技術の修得を目指し、大学院に進学する皆さんは、それぞれの目的の達成に向け、一層学業に励まれますよう期待しております。
 大学院博士前期課程を修了した皆さんは、本学で修得した高度な専門力を活かし、新技術の研究開発に挑戦するとともに、プロジェクトをまとめ上げていくリーダーとして活躍されますよう期待しております。
 現代の科学及び技術は、日々進歩して止むことはありません。それ故、今後とも、常に学ぶ姿勢を堅持していただきたいと思います。現在、産業界においては、様々な分野が互いに深いかかわりを持ち、一つの製品を作る上で、異なる業種間で協力し合う場合も少なくありません。従って、どのような分野に携わるにしても、他の分野の知識や考え方が必要となります。自分の専門分野のみならず、人文・社会、医学などにも視野を広げ、バランスのとれた知識を身につけるよう努め、また、他分野との協働にも積極的に取り組んでいただきたいと思います。これからも多くの人々との出会いを重ね、様々な現場に触れることで、より大きく成長していただきたいと願っております。
 さて、2013年のノーベル物理学賞は、フランソワ・アングレール博士及びピーター・ヒッグス博士に授与されました。授賞理由は「物質の質量の起源に関する理論的発見」です。両博士は、自然の仕組みについて宇宙誕生にまでさかのぼって研究を進め、物質が質量を持つようになるために、新しい素粒子の存在が必要であるとの結論に至ったのであります。その未知の素粒子は「ヒッグス粒子」と呼ばれ、その存在を実証するための努力が、長年にわたり続けられてきましたが、近年、スイス・フランス国境に設置された世界最大の加速器により、日本人研究者を含む国際研究チームが実験を重ねた結果、ついにその存在が確認されたのであります。
 この実験に用いられた装置や素材の開発には、外国企業とともに、いくつかの日本企業が参加しています。その中でも、上越市の有沢製作所は、素粒子検出器のセンサーに用いられるフレキシブル・プリント配線板、いわゆるFPCの製作を担当し、その優れた品質に対し、国際研究チームから高い評価を受けております。ヒッグス粒子を探索する過程において、本県製造業の技術力の卓越性が世界に認められたことは、われわれの誇りとするところであります。皆さんも、志を高く掲げ、やがて世界を舞台に活躍する技術者になるのだという気概をもって、これからもたゆむことなく研鑽を積んでいただきたいと思います。
 この3月で東日本大震災から3年が経過いたしました。日本は未だ復興の途上にありますが、皆さんも復興支援のため、自分のこれまでに修得した技術は、どのような場で活かせるのかを、常に心に留めておいていただきたいと思います。

 これから迎える若葉の季節にふさわしく、新たな希望にあふれた皆さんを社会に送り出せることを、この上ない喜びとするところであります。卒業後も折にふれて母校を訪れ、後輩を励ましてください。

 最後に、このたび学位記を授与されたすべての皆さんが、心身ともに健康で、自信と誇りをもって地域や日本、さらには世界の発展に貢献されますよう祈念し、ここに式辞といたします。

平成26年3月21日          
新潟工科大学長  長谷川 彰