指示動作の技能の定量的な評価方法
発表技能を定量的に評価する装置として、例えば、視聴者に相当するモデルがあれば、発表方法(具体的には、ポインタ軌跡)を定量的に評価することができ、発表練習の効果が向上することが期待できる。
そこで、ポインタ軌跡に基づいて呈示画像中の指示されたシンボルを抽出し、近似的な受信情報を生成する基本的な「視聴者モデル」を作成することが一つの目的となる。
3章では、視聴者モデルの構成について、またでは、視聴者モデルの中心となる、指示棒の動き(ポインタ軌跡)から画像内の心理的な集中領域を決定する方法について述べる。
また、指示動作自体は発表者が獲得する動作であり、運動技能の獲得の練習効果は、
(1)時間の短縮
(2)正確さの向上と誤りの減少
(3)複雑な課題への適応性
(4)課題遂行時の注意努力の減少
となって現れる。
また、運動学習の過程に見られる技能向上と筋群の活動の変化との関連も注目されている。
すなわち、技能向上につれて、
(5)主動筋と補助動筋の分離が明らか
(6)余剰の筋活動は減少
する。
したがって、これらを定量的に評価すればよい。
但し、(1)の動作速度に関して言えば、早すぎる指示棒の動きは好ましくなく、むしろゆっくり動かした方がよいことが知られている。
また(2)でも、厳密な精度は必ずしも必要ではないと考えられる。
(3)の適応性は重要ではあるものの、当面は、単一の課題に対してだけ行うのが練習の目的であると位置づけられるので、この方法も採用できない。
(4)の注意集中度は脳波のα波成分の測定で評価できる可能性があり、また、(5),(6)筋活動度は、動作に関する脳筋群の筋電図によって評価することができる。
しかしながら、これらの測定のためには身体に接触的に測定装置を装着する必要があり、簡便な計測は困難である。
これらを考えあわせて、本研究では、「より自然な指示動作」の達成により、運動学習の獲得を評価する。
この方法については、5章で述べる。