平成25年度 新潟工科大学入学式 式辞

 

 本日ここに、ご来賓ならびに保護者の方々のご臨席を賜り、平成25年度新潟工科大学入学式を挙行することになりましたことは、誠に喜びに堪えません。
  このたび、新たな決意を胸に新潟工科大学に入学された皆さんを心より歓迎いたします。また、これまで皆さんを支えてこられた方々のお喜びも如何ばかりかとお察しし、心よりお祝い申し上げます。

  本学の歴史は、平成2年9月、新潟県内258社の製造業経営者が、産業界及び地域の発展に貢献する技術者の養成を目指し、新潟工科大学設立同盟会を発足させたときに始まっています。設立同盟会の熱意が新潟県及び柏崎市をはじめとする78市町村を動かし、また、県内外の企業や個人から、3千件にのぼる寄付が寄せられた結果、平成7年4月、新潟県内初の工科系私立大学として本学は開学いたしました。卒業生はすでに3千人を超え、新潟県内外で活躍していますが、とりわけ第一期生は30代半ばとなり、産業界で中心的役割を担うまでに成長し、今後の活躍に大きな期待が寄せられています。
  新潟工科大学の理念は「産学協同」であり、建学の精神は「ものづくりの視点を重視した工学教育に基づき、未知の分野に果敢に挑戦する創造性豊かな人材を育成する」であります。
  大学の理念及び建学の精神を踏まえ、本学が教育目標に掲げていることは、ゆるぎない専門的知識と技術を修得し、広い視野と深い教養を身につけ、地元地域や日本、さらには広く世界で活躍する人材の育成です。この教育目標を達成するため、本学は、最新の工学の知識と技術を精選して体系的に編成し、基礎から応用までを段階的に学ぶことができる教育課程を提供するとともに、演習、実験及び実習を通じた、きめ細やかな指導により、学生一人ひとりの個性を伸ばすよう努めています。本学は、教育研究のための優れた施設や設備を備え、かつ、有能な教職員を擁しています。このような恵まれた学習環境を積極的に活用し、充実した学生生活を送っていただきたいと思います。

  現在、産業界が工科系の学生に求めているのは、ものづくりの知識や技術に加え、創造力や挑戦力、コミュニケーション力など、人間力と呼ばれる、人間としての総合的な能力です。本学は、このような産業界の要請に応え、昨年度、新しい課題探求型の授業「工学プロジェクト(学内企業実習)」を導入いたしました。この授業では、経験豊かな企業人の協力のもと、異なる学科及び学年が混在する少人数グループが、与えられた課題の解決を目指し、グループワークに取り組みます。この授業を通じ、現代社会に求められている人間力をしっかりと培ってください。
  大学院工学研究科は、より高度な知識と技術を身につけた、創造性豊かな高級技術者の養成を目指しています。大学院では、学生が主体的に研究に取り組むという点が学士課程と大きく異なります。指導教員が研究の方向性を示し、研究の進め方について教授しますが、研究を進めるのはあくまでも学生自身であることを心に留めていただきたいと思います。

  現代の科学及び技術は、日々進歩して止むことはありません。アメリカの科学誌サイエンスが、2012年科学の十大ニュースの第一位に選んだのは、日本を含む国際研究チームによる「ヒッグス粒子の発見」です。ヒッグス粒子は、現代物理学の標準理論に基づき、物の重さの起源となる素粒子としてその存在が予言され、長年にわたる探索にも拘らず実証されずにいましたが、近年、スイス・フランス国境に設置された世界最大の加速器を使って実験を重ねた結果、ついにその存在が確認されました。人類の叡智を結集した努力が、見事に実を結んだ快挙であります。ヒッグス粒子の存在が確認されたことで、今後、宇宙の成り立ちや素粒子の性質についての理解が一層深まるものと期待されます。
  ヒッグス粒子の探索には、わが国も大きな貢献をなしています。特に、加速器の主要部分となる超電導磁石の素材や冷却装置、また、粒子を探知するためのシリコン検出器や光電子増倍管などについては、多くの企業がそれぞれ得意とする素材の開発や機器の製造を担当し、日本の技術力の高さを世界に示したことは、我々の誇りとするところであります。
  日本の技術が高く評価される中、本学は、開学以来、最先端の科学技術の成果に基づいた教育と研究を行ってきました。皆さんも、志を高く掲げ、やがて世界を舞台に活躍する技術者になるのだという気概をもって勉学に励んでいただきたい。それは必ず優れた技術者への道に結びついていくはずです。

  さて、この3月で東日本大震災から2年が経過しました。日本は未だ復興に向かって長い道のりを歩んでいますが、皆さんも、自分がどのような側面から日本の再生に寄与することができるかを、これからの大学生活の中で考えていただきたいと思います。

  最後に、美しい自然に恵まれたこの柏崎の地で、皆さんが心身ともに健やかに学生時代を過ごし、自信と誇りをもって世界に羽ばたく日を迎えられんことを心より願い、ここに式辞といたします。

平成25年4月4日          
新潟工科大学長  長谷川 彰