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【コラム】新型ウイルス感染症対策と空気の流れについて(7)

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【コラム】新型ウイルス感染症対策と空気の流れについて(7)

新型コロナウイルス感染症の主要な感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」であり、「空気感染」については、起こる可能性は低いと当初考えられていました。しかし、対策として「3密」の一つとして「換気の悪い密閉空間」の回避が推奨されていたことから分かるように、「飛沫感染」や「接触感染」では説明できない感染経路の存在は、認識されていました。感染拡大から1年以上が経過し、さまざまな知見が蓄積され、現時点での厚生労働省の見解は以下のようになっています(筆者要約)。

  • 新型コロナウイルスの感染経路として重要なのは「マイクロ飛沫感染」である。これは微細な飛沫である5μm未満の粒子が、換気の悪い密室等において空気中を漂い、少し離れた距離や長い時間において感染が起こる感染経路である。
  • 屋外を歩いたり、感染対策のとられている店舗での買い物や食事、十分に換気された電車での通勤・通学で、「マイクロ飛沫感染」が起きる可能性は限定的である。
  • 「空気感染」は、より小さな飛沫が引き起こす感染経路であり、例えば空調などを通じて長い距離でも感染が起こり得る。結核菌や麻疹ウイルスでは確認されている。
  • 「マイクロ飛沫感染」と「空気感染」とは異なる概念である。

ここで使われる「マイクロ飛沫」は、一般には「エアロゾル」と呼ばれたりしますが、「エアロゾル」あるいは「エアロゾル感染」の定義が必ずしも定まっていないことから、厚生労働省では「マイクロ飛沫感染」と表記しているようです。英語では、上記のような区別はされておらず、airborne transmissionと呼ばれています。

最近、LANCETという著名な医学雑誌に、Ten scientific reasons in support of airborne transmission of SARS-CoV-2SARS-CoV-2の空気感染をサポートする10の科学的根拠)と題する記事が掲載されました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673621008692

この記事では、新型コロナウイルスが「主に(primarily)」空気によって運ばれるという仮説を、これまでの研究結果のレビューによって10の観点から検証しており、他の経路に比べて空気感染が圧倒的に多いと結論付けています。これまで空気感染の存在が否定的に考えられた理由として、新型コロナウイルスの基本再生産数が麻疹などよりも低いことと、感染者の排出するウイルス量の個人差が非常に大きいことを挙げています。

「マイクロ飛沫感染」が主要感染経路であるからと言って、これまでの感染防止対策が大きく変わる訳ではありませんが、身の回りを漂う空気の動きや質について、一層の注意が必要です。要は、空気中に存在するウイルスを含んだマイクロ飛沫を減らさなくてはいけない訳ですから、一つは、マイクロ飛沫を発生させない、つまりマスクをせずに大声で話す・歌う・叫ぶなどの行為を避ける、もう一つは、空気中のマイクロ飛沫を減らす、つまり換気を十分にすることです。いわゆる「ソーシャルディスタンス」やパーティション等による仕切りだけでは「マイクロ飛沫感染」に対してあまり効果は期待できないことになりますので、注意が必要です。

室内のマイクロ飛沫が換気によって除去される様子のCFDシミュレーション(当センターで実施):細かい飛沫(青色の粒子)は長い時間空気中を漂うことが分かります

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